外科治療に関するQ&A メモを隠す
回答者:東京大学大学院医学系研究科・医学部 臓器病態外科学講座 腫瘍外科 教授 石原聡一郎 先生
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カテゴリ 潰瘍性大腸炎の外科治療について
質問 潰瘍性大腸炎では、どのようなときに手術が必要になりますか?
答え 手術が必要な場合は、手術適応があるといいます。手術適応には、いろいろなものがありますが、大きく分けて絶対的適応と相対的適応があります。絶対的適応というのは、どうしても手術が必要で、手術をしないと生命が危険な状況となる場合です。相対的適応とは、いろいろな状況を総合的に考えて手術を行ったほうが良いと考えられる場合です。
まず絶対的適応には、重症(大出血、腸穿孔、重症発作)、大腸がんの合併などがあります。大量出血や腸穿孔などの場合は緊急の手術が必要となります。腸穿孔とは、腸の壁に孔(あな)があいてしまうことです。また、大腸がんを合併した患者さんの場合にも、早い時期の手術が必要となります。
相対的適応には、難治が最も多いといわれています。また、潰瘍性大腸炎に対する薬の副作用や、重い腸管外合併症がある場合などがあります。たとえば、ステロイドを多量長期服用していると、小児の場合には成長障害、成人の場合には骨がもろくなるような副作用が認められます。このような副作用による影響が大きい場合には、手術の相対的適応と考えられます。相対的適応の場合は、緊急手術をしなくてはならないわけではありませんが、薬の副作用、日常生活の上での問題などを総合的に考えて手術を行うか決定することが重要です。したがって、患者さんの職業、年齢、生活環境などによっても状況は異なりますので、相対的適応を決定する場合には、こういったさまざまな因子を総合的に十分考慮する必要があります。
手術するか否かは、最終的には担当の内科医、あるいは外科医、そして患者さんの間の十分な話し合いをして決定することが重要です。
参考図
参考図2
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カテゴリ クローン病の外科治療について
質問 クローン病ではどのようなときに手術が必要になりますか?
答え クローン病は、基本的には内科的治療が主体となる疾患ですから、外科的な処置は合併症に対して行われることになります。腸管の手術適応となる合併症は大きく分けて3つあります。腸管が狭くなる狭窄。腸管に穴があく穿孔あるいは膿瘍。そしてもう1つは、大出血です。腸管の手術をするのは、主にこの3つの合併症です。出血と言っても大出血です。普通の出血程度では手術にはなりません。肛門に生じる痔瘻に対して症状緩和や根治のために手術が必要になる場合もあります。まれに炎症を母地としてがんが生じる場合があり、切除が必要になる場合もあります。
参考図
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カテゴリ 潰瘍性大腸炎の外科治療について
質問 潰瘍性大腸炎では手術による入院期間はどれくらいですか?
答え 入院期間は、手術の種類、患者さんの状態、術後の状態などにより、かなり異なります。一般的な目安としての入院期間を示すと以下のようになります。
手術を2回または3回に分けて行う場合、最初の手術は、結腸の大部分を切除して人工肛門を造る手術である結腸亜全摘術(けっちょうあぜんてきじゅつ)・S状結腸粘液瘻(えすじょうけっちょうねんえきろう)・回腸人工肛門造設術(かいちょうじんこうこうもんぞうせつじゅつ)を行います。この手術を行った場合の入院期間は、多くの場合、手術後数日〜1週間くらいで食事が摂れ、2〜3週間程度で退院が可能となります。しかし、この手術は、穿孔などのために緊急手術として行う場合も多くあります。この場合には、手術を行う時点で体力が低下している場合があり、術後の回復時間も通常よりも長くなります。また、術後の感染症などの合併症が生じる可能性も高くなり、これらを生じると入院期間も長くなります。また、この手術では、人工肛門を造るため、患者さんが人工肛門の使い方に慣れるまでの時間も必要となります。この時間も、患者さんの年齢などにより異なります。したがって、入院期間は短くても術後2〜3週間と考えておいた方が良いでしょう。
大腸をすべて切除して小腸のパウチ(袋)と肛門を吻合(縫い合わせる)する場合には、手術後3〜4週間で退院が可能となります。また、この手術では、一時的な人工肛門を造る場合と、造らない場合があります。人工肛門を造った場合は、造らない場合よりも術後早く食事を再開できますが、人工肛門に慣れるまでの時間が必要となります。
上記の期間はあくまで、手術および術後の経過がすべて順調に行った場合の目安です。潰瘍性大腸炎ではステロイドが投与されている状態で手術となる場合も多く、この場合には術後の合併症が起こる頻度が高くなります。一旦合併症を生じると、当然入院期間は長くなります。
参考図
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カテゴリ 潰瘍性大腸炎の外科治療について
質問 潰瘍性大腸炎の場合の手術をするメリットとデメリットを教えてください。
答え 手術をするメリットは、手術をすることになった理由によっても異なります。
絶対的適応、つまり大出血や腸穿孔で手術をする場合は手術を受けないと生命が危険となります。大腸がんを合併した場合も、放置しておくとがんが進行して治すことができなくなります。つまり、絶対的適応で手術をする場合は、これらのことを回避することが目的であるのと同時に、一番のメリットとなります。
一方、相対的適応で手術をする場合は若干異なり、内科的治療に抵抗したり、ステロイドなどの副作用で、患者さんのQOL(生活の質)が損なわれている場合に手術を受けることになります。つまり、QOLが向上したり、ステロイドの合併症を回避したりそれ以上の進行を止めることがメリットとなります。入退院を繰り返しているような場合は、入院を回避して社会生活に影響を及ぼさずに済むこともメリットのひとつです。また、食事に関しては特に制限がなくなるので、何でも好きなものを食べられるようになるのも手術によるメリットです。その他には、大腸がなくなるので大腸がんの危険性がなくなるのも、大きなメリットです。
デメリットとしては、手術が行われる時期には多くの患者さんでステロイドが使用されており、ステロイドが傷の治りを障害したり、感染に対する抵抗力を抑えるため、安全のために手術を2〜3回に分けて行う場合が多いことによって、入院を含む治療期間が最終的に数ヶ月間必要となることがあげられます。この期間のすべてを必ずしも入院している必要は無く、2回目あるいは3回目の手術まで退院して生活をすることができますが、人工肛門で生活する必要があります。また、手術後は便回数が多くなります。手術直後は頻回でも、期間を経るにしたがって徐々に排便回数は減少し、1年くらい経つと1日5〜6回位に減ります。その他、排便にかかわる問題としては、便とガスの区別がし難くなったり、夜間に少量の便の漏れがある場合もあります。
また、小腸で造ったパウチ(袋)に炎症が起こり(これを回腸嚢炎:かいちょうのうえん、と呼んでいます)、腹痛や発熱などが認められる可能性もあります。これによる症状があまりにひどい場合には、大腸全摘出してせっかく回腸嚢と肛門の吻合を行ったのに、その回腸嚢を切除して、最終的にまた人工肛門に戻さなければならなくなる患者さんも、非常に頻度は少ないながらも報告されています。また、癒着による腸閉塞が起こることもあります。
なお、大腸全摘術を行った際の手術死亡率は、手術の前の患者さんの状態により異なりますが、これまでの報告では約1〜2%あるいはそれ以下で、死亡例のほとんどは重症で、内科的治療を続けていればもっと死亡率が高くなった例です。
以上が、手術に関連して起こる可能性のある「デメリット」です。
参考図
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カテゴリ 潰瘍性大腸炎の術式について
質問 潰瘍性大腸炎ではどのような手術を行うのですか?
答え 潰瘍性大腸炎では大腸をすべて切除する手術が標準的な手術です。これを大腸全摘術(だいちょうぜんてきじゅつ)と呼びます。この手術では、大腸をすべて切除して、小腸で作った袋状のパウチ(回腸嚢:かいちょうのう)を肛門につなぎます。ただし、その時の患者さんの状態によって手術を1回で行う場合と何回かに分けて行う場合があります。
何回かに分けて行う場合ですが、これには2回に分けて行う方法と、3回に分けて行う方法があります。3回に分けて行う場合は、図に示すような手術が行われます。最初の手術は、結腸の大半を切除して人工肛門を造る手術を行います。この手術は、結腸亜全摘術(けっちょうあぜんてきじゅつ)・S状結腸粘液瘻(えすじょうけっちょうねんえきろう)・回腸人工肛門造設術(かいちょうじんこうこうもんぞうせつじゅつ)と呼ばれています。ステロイドが大量に投与されているにもかかわらず大量出血が認められる場合や、腸穿孔が認められる場合など、緊急手術が必要な場合は多くの場合この手術が行われます。この手術では、人工肛門を造るため、手術後は通常の食事を摂ることが可能となります。特に食べていけないものはありません。直腸とS状結腸の一部が残りますが、もしこの部分に炎症が認められる場合などは、坐薬など局所的な治療を行えば対処できます。つまり全身的なステロイドの投与は必要ありません。手術前にステロイドが投与されていた場合には、徐々に投与量を減らしていきます。ステロイド剤の全身投与が必要なくなり、全身状態の改善が見られたら、次に2回目の手術をおこないます。2回目の手術までの期間の目安としては、ステロイドが完全に切れた段階から、3ヶ月くらいをあけることが多いので、1回目と2回目の手術の間は、大体半年くらいかかることになります。
2回目の手術では、残っている直腸・S状結腸を切除して、小腸でパウチ(回腸嚢) を造り肛門と吻合を行います。この場合、吻合部を安静に保つために一時的な人工肛門を造る場合と、造らない場合があります。人工肛門を造った場合は、その後、人工肛門を閉じる手術が必要となります。つまりその場合には、合計で3回の手術が必要となります。
大腸全摘術はこのように合計2回、あるいは3回に分けて行うこともありますが、1回で行われる場合もあります。2回あるいは3回に分けて手術を行うか、1回で行うかは、患者さんの全身状態、手術になる理由など総合的に考えて判断されます。一般的に、ステロイドが多量に投与されているような場合は、縫合不全(ほうごうふぜん:小腸のパウチと肛門がうまくつながらないこと) の危険性が高くなるので、1回で手術を終えることは難しくなります。
また、大腸全摘術でパウチ(回腸嚢) と肛門との吻合法には2通りの方法があります。これらは、回腸嚢肛門吻合術(かいちょうのうこうもんふんごうじゅつ:IAA)および回腸嚢肛門管吻合術(かいちょうのうこうもんかんふんごうじゅつ:IACA)と呼ばれています。IAAでは肛門の中の直腸の粘膜を完全に切除してから、パウチと肛門を吻合します。一方IACAでは、肛門内の直腸粘膜を約2cmほど残して吻合を行います。
両方の手術方法がおこなわれていますが、それぞれの方法で、メリットとデメリットがあります。実際の手術の方法について言うと、IACAのほうが簡略にできる手術法です。しかし、少ないながら肛門の中の直腸粘膜が残るため、手術後にこの残った粘膜に炎症が再燃したり、がんが発生したりする可能性があります。がんが発生した場合は再手術が必要となります。また、炎症が再燃した場合は、坐薬などの局所治療を行う必要があります。術後に便の漏れ(漏便:ろうべん) が認められる場合がありますが、IAAのほうがIACAよりも漏便の頻度が高いと報告されています。
また、最近は腹腔鏡補助下手術(ふくくうきょうほじょかしゅじゅつ) も行われています。これは腹腔鏡という内視鏡を用いて手術を行うものですが、従来の手術と比べておなかの傷が小さくて済むという利点があります。手術時間は通常の開腹手術と比べると長くかかりますが、傷が小さいため術後の痛みが軽く、早く日常生活に戻れる利点があるとされています。ただし、腹腔鏡補助下手術は、現在どの施設でも行われているわけではありません。また、腸に穿孔を生じたような緊急手術では、腹腔鏡補助下手術でなく開腹手術しか行えません。
参考図 1-2-3.JPG (image/jpeg)
参考図2 IAA_IACA.JPG (image/jpeg)
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カテゴリ クローン病の術式について
質問 クローン病ではどのような術式が行われますか?
答え クローン病の病型が小腸型なのか、大腸型なのかによって違います。つまり、手術適応となる合併症(狭窄・穿孔・出血部位)が小腸にあるのか大腸にあるのかによって異なります。狭窄・穿孔・出血が小腸にある場合は、小腸のその狭窄部位、穿孔部位、出血部位を切除するということが基本的な考え方になります。クローン病は累積手術率、再手術率が高い疾患ですから、栄養療法や薬物療法などの治療法の効果がなかった場合には、20年とか30年という期間中に何回も手術をする可能性があります。従って、小腸の場合にはできる限り短い範囲だけを切除して吻合する、あるいは切除をしないで狭窄の場合には狭窄形成術を行うような術式が選択されます。一方大腸の場合は、大腸の病変がどこにあるかにもよりますが、その部分を切除して済む場合はその部分だけ切除しますが、もし大腸にいくつもの病変が飛び飛びに存在する場合には、結腸亜全摘と言って直腸だけ残して結腸を全部切除するというような手術が行われる場合があります。
参考図
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カテゴリ クローン病の術式について
質問 狭窄形成術とはどのような術式ですか?
答え 幅が長くない狭窄があるとすると、そこを含めて縦軸に、長軸方向にまず腸管を4〜5cm切開して腸間膜対側をあけ、それを腸管軸に直行する方向に縫います。つまり、縦に切って横に縫うという格好になるのですが、この術式をHeineke-Mikulicz法と言います。これが一番単純で、最も多く行われている術式です。この他にも、狭窄形成術にはJaboulay法やFinney法と言った、より長い狭窄に用いられる術式もあります。Heineke-Mikulicz法は4〜5cm切開し、Finney法は7〜8cm切開し縫合します。Jaboulay法は4cm位ずつ切開し腸管を長軸方向同士で吻合します。長い狭窄の場合、狭窄部が狭いため縫合してもそこの部分が全然役に立たないので、Finney法を選択するよりはJaboulay法になると思います。Jaboulay法は狭窄部がどんなに長くても実施できるという利点があります。
参考図 Crohn1.JPG (image/jpeg)
参考図2
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カテゴリ クローン病の肛門病変について
質問 クローン病の痔瘻の手術で行われるシートン法とはどのようなものですか?
答え シートン法には、ドレナージシートンとカッティングシートンという2種類の方法があります。通常クローン病の痔瘻に対して行われているのはドレナージシートンという方法です。これは痔瘻の瘻孔をペンローズドレーン(シリコン製のチューブ)などで膿がたまらないように、膿を外へ排液できるように誘導する術式です。一方カッティングシートンというのは、通常の痔瘻の手術の時に使われる術式ですが、糸やゴムなどで瘻孔を縛っておくと、瘻孔が徐々に切れて短くなり、肉芽があがってふさがるという術式です。この術式は一般的な痔瘻に対する根治術の1つになっています。ですから、瘻孔がふさがった時に痔瘻が治っていることになります。それに対して、ドレナージシートンは痔瘻を治しているわけではありません。膿がたまらないように誘導しながら、少しずつ肉芽を上げてきて、最終的に肉芽があがったところでペンロースドレーンを取るという方法です。
参考図 Crohn2.JPG (image/jpeg)
参考図2
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カテゴリ 術後合併症について
質問 潰瘍性大腸炎で手術直後ですが、便が日に10回以上と多く不安です。便回数はずっとこんなに多いのですか?
答え 便の回数に関しては、大腸をすべて切除する手術(大腸全摘術) をした直後は、手術前に比べて、便の回数が多くなります。これは大腸が行っている水分の吸収、糞便の形成および貯蔵の機能がなくなるためです。ですから、手術直後に便の回数が日に10回以上と多くても心配ありません。手術後時間が経つにしたがって、小腸で造ったパウチが、大腸が行っていた水分の吸収や糞便の貯蔵といった働きをするようになってきます。それにともなって、排便回数は減ってきます。しかし、手術後すぐに手術前のような大腸の働きをすることは無理です。パウチが大腸の代わりの働きをするようになるには時間がかかります。ですから、手術後1週間や2週間の間で見ると便の回数の変化は良くわかりません。しかし数ヶ月単位で見て、便の回数が減っているかを比べて見ることが大切です。術後1年以上経った場合の排便回数は平均5〜6回/日程度といわれています。しかし、最終的に1日の排便回数が何回になるかは、年齢、手術術式( 肛門の中の粘膜を切除するか、しないか) 、パウチの大きさなどによっても多少異なります。
参考図
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カテゴリ 術後合併症について
質問 術後は痛いのですか?
答え 手術は全身麻酔で行いますが、多くの場合、硬膜外麻酔(こうまくがいますい)という方法も一緒に行われます。これは、背中にやわらかいチューブを刺して、このチューブから薬を注入し、主に手術で操作が行われる腹部や肛門部の痛みを和らげるものです。このうち全身麻酔は手術中のみに使われますが、硬膜外麻酔を行うチューブは、多くの場合術後の痛みに対しても使用されます。したがって、手術が終わった後、回復期間中にもこのチューブから薬を注入して術後の痛みを和らげることができます。また、この方法を用いない場合や、チューブから薬を入れても痛みが取れない場合は、痛みに対して別に薬を使用することも可能です。ですから、術後の痛みに対して対処できるので、あまり心配する必要はありません。腹腔鏡で手術が行われた場合には創が小さいので開腹術にくらべて痛みは少ないといわれています。
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カテゴリ 術後合併症について
質問 一般的な術後の合併症にはどのようなものがありますか?
答え 潰瘍性大腸炎やクローン病の手術に限りませんが、全身麻酔の手術の直後には出血の危険性があります。臓器を摘出するためには血管を処理するわけですから、術後24時間以内に術後出血の危険性があります。術後3日間くらいは、立って歩かないことも多いので術後肺炎を起こす危険性があります。細気管支の閉塞により、肺の一部または全部にガスが行きわたらない状態になり、痰が詰まって出せず、肺炎になることがあります。1週間目くらいになると縫合不全というような合併症が起こる危険性があります。腸管をつなぐような手術では、どのような手術でも縫合不全になる可能性はあります。これらが一般的な術後の合併症です。このような合併症が起こらなければ、食事を開始し、その後2週間くらいで退院するというのが、普通の術後経過です。それ以外には、術前から持っていた合併症の処置が重要となります。
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カテゴリ 術後合併症について
質問 潰瘍性大腸炎の術後の合併症にはどのようなものがありますか?
答え 術後の合併症には、術後の早い時期に起こるものと、時間が経ってから起こるものがあります。また、実際に行われる手術の方法によっても、合併症の種類は異なります。
(1)結腸亜全摘(けっちょうあぜんてき)・S状結腸粘液瘻(えすじょうけっちょうねんえきろう)・回腸人工肛門造設術(かいちょうじんこうこうもんぞうせつじゅつ)の場合
緊急手術で、S状結腸粘液瘻・回腸人工肛門造設術を行った場合の術後早期の合併症には、腹腔内の感染や、腸閉塞、あるいは残った腸からの出血などが起こる可能性があります。緊急手術でこの手術を行う場合には、全身状態が低下していて合併症は多くなります。また、すでに腸に穿孔(せんこう)が起こってお腹の中に便が漏れてしまい、感染症を起こしている場合には、術後はお腹の中に膿瘍(のうよう) ができたり、お腹の傷が膿んでしまう合併症などの確率が高くなります。また、残ったS状結腸、あるいは直腸から出血がみられることがありますが、これに対しては、局所的にステロイド剤を注入するなどの方法で対処できます。
その他、一般的な手術に伴う合併症(肺炎や肝臓、腎臓機能障害など) の発生する可能性もあります。
(2)大腸全摘術(だいちょうぜんてきじゅつ)を行って回腸嚢(かいちょうのう)と肛門を吻合した場合
大腸全摘術を行って、回腸嚢と肛門を吻合した場合の術後早期の合併症には、骨盤の中に膿がたまる骨盤内膿瘍(こつばんないのうよう) 、縫合不全(ほうごうふぜん)、回腸嚢の中からの出血などがあります。縫合不全とは、回腸嚢と肛門のつないだ部分がうまくつながらないために、便が腸の外に漏れてしまうことです。骨盤内膿瘍とは、直腸を切除した後の骨盤の中に膿がたまることです。回腸嚢からの出血は、小腸で袋状の回腸嚢を造ったときの小腸と小腸を縫合した部分から出血が起こるものです。これらの合併症には、さまざまな方法で対処できますが、そのような方法で十分な対処ができない場合には、再手術が必要な場合もまれにはあります。
その他、大腸全摘術の場合も、一般的な手術に伴う合併症(肺炎や肝臓、腎臓機能障害など)の発生する可能性もあります。
(3)手術後時間が経ってから発生する合併症
手術後時間が経ってから発生する合併症としては、回腸嚢炎、膿瘍、瘻孔などがあります。回腸嚢炎は、小腸で造った回腸嚢の中に炎症ができて、腹痛や発熱、下痢、下血などが認められます。回腸嚢炎は、何回も繰り返すこともあります。女性ですとパウチの炎症が強くて膣に孔があいたりして最終的にせっかく造ったパウチを切除しなくてはならない場合もまれにはあります。膿瘍は、体の中に膿がたまってしまう状態ですが、この膿のたまりから皮膚にトンネルができて膿が外に出てくる場合を瘻孔といいます。多くの場合、膿瘍や瘻孔は回腸嚢と肛門とを吻合した部分の周囲に起こります。これらの合併症が生じたときには、内科的に治療を行いますが、場合によっては再手術が必要となります。
参考図
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カテゴリ 術後合併症について
質問 回腸嚢炎とはどのような病気で、どのような治療法があるのでしょうか?
答え 全大腸切除術では、回腸で袋状のパウチ(回腸嚢) を造ります。手術後に、この回腸嚢に炎症が認められることがあり、これを回腸嚢炎(かいちょうのうえん)と呼んでいます。原因は明らかにはなっていません。症状は、腹痛、下痢、発熱、下血などが認められます。また、回腸嚢の中の小腸の粘膜には、潰瘍や発赤などが認められます。したがって、このような症状と回腸嚢の内視鏡検査を行って診断がなされます。治療は、通常はフラジールやシプロキサンなどの抗菌薬の内服投与が行われます。これらの治療で改善しない場合には、5-ASAやステロイドを使うこともあります。
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カテゴリ 潰瘍性大腸炎の外科治療について
質問 潰瘍性大腸炎では、手術をすれば完治するのでしょうか?手術をしても治療の継続は必要なのですか?
答え 手術をすると大腸を切除してしまうので、基本的には潰瘍性大腸炎に対する治療を継続する必要はありません。しかし、大腸をすべて取ってしまうので、排便回数が多くなり、これに対して薬を使用する場合もあります。また、回腸嚢肛門管吻合術を行った場合には、肛門の近くの大腸粘膜が少し残ります。もしこの大腸粘膜に炎症があれば、坐薬などを使用します。また、小腸で造った回腸嚢自体に炎症(回腸嚢炎)がおこることもあります。この場合にも、炎症を抑える薬が必要となる場合があります。
その他、手術後も壊疽性膿皮症(えそせいのうひしょう)などをはじめとする腸管外合併症、つまり潰瘍性大腸炎でみられる大腸以外の症状が生じる可能性も完全には否定できません。もしこういった症状が出た場合は、症状にあわせた治療が行われます。
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カテゴリ クローン病の外科治療について
質問 クローン病は手術をしても再発するのですか?
答え クローン病の場合、内科治療も原因(根治)治療ではありませんが、外科的な手術も原因治療ではありません。つまり、手術をして病変部位を取れば治るという病気ではありません。潰瘍性大腸炎の場合は、病気の原因が取れるという意味ではなく、病気の場が取れると言う意味で大腸全摘をすれば病気は治るのですが、クローン病の場合は、口から始まってお尻、肛門に至るまで、消化管の粘膜のどこにでも起こる病気ですから、残念ながら病変部位だけを切除したからと言って治ると言うことにはなりません。
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カテゴリ 潰瘍性大腸炎の外科治療について
質問 大腸がなくなってしまうのはとても不安です。術後の生活はどうなるのでしょうか?
また、退院直後の生活で注意することはありますか?
答え 潰瘍性大腸炎では、手術で大腸を切除してしまうので、もっとも問題となるのは排便機能です。手術後は排便回数が多くなりますが、小腸が徐々に大腸の代わりをすると考えられており、経過とともに便回数は減っていきます。手術後1年で、大体1日5〜6回程度の排便回数となります。
そのほかに問題となるのは、便が少し漏れる場合があることです。これは個人によって異なり、まったく漏れがない場合から、夜間に少し漏れる場合、さらには、日中に漏れがある場合もまったく無いわけではありません。特に高齢者では、便の漏れの頻度が高くなります。これはお尻の括約筋の力、つまり肛門をしめる力が高齢者は若年者に比べて落ちており、便の回数や便の漏れの頻度が高くなる可能性があります。また、肛門の機能はトレーニングである程度改善することがあり、便の回数が減る可能性もあります。このように便が漏れる可能性がありますが生活に支障が少ない程度の漏れがほとんどです。ですから、日常生活は仕事、遊び、運動など、大きな制限はありません。また、漏便が認められても、パッドを当てることによって日常生活を送ることが可能です。
以上のように、退院直後に注意することは、主に排便機能に注意しながら生活を送ることです。食事は特に制限はなく摂ることができます。したがって、手術前とは違って、何でも食べることができるようになります。ただし、多量の水分を一度に摂ったりすると、便の回数が多くなる可能性があります。また、手術後、女性では薬物治療の副作用を心配することがなくなりますので、妊娠、出産も可能となります。
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カテゴリ 人工肛門について
質問 人工肛門とはどのようなものですか。
答え 人工肛門と言うのは、腸をお腹の外に出した状態の事を言います。人工肛門には出口が1つの単孔式のものと、出口が2つある双孔式のものがあります。双孔の人工肛門というのは、一時的なものが多く、最終的には腸を繋げて肛門から排泄できるようになります。潰瘍性大腸炎のパウチ手術の時には一時的に双孔式の回腸人工肛門を作りますが、その後人工肛門を取り除くと、普通に肛門から便が出るようになります。
参考図 Stoma.JPG (image/jpeg)
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カテゴリ 人工肛門について
質問 人工肛門になった場合、日常生活で制限されることはありますか。
答え 現在は装具が非常に良くなり、手術技術も進歩しており、特に大腸で作った人工肛門の場合には、生活の質(QOL)は非常に良くなっています。ただし回腸人工肛門(回腸瘻)の場合には水様便や泥状便が多いので、漏れてしまった場合皮膚がかぶれることも考えられ、管理がやや難しいこともあります。皮膚炎などがある時には、身体障害者手帳の4級を取得できる場合もあります。通常、回腸人工肛門は体の右に出口ができ、S状結腸の人工肛門は左に出口ができます。
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