外科治療に関するQ&A メモを隠す
回答者:東京大学大学院医学系研究科・医学部 臓器病態外科学講座 腫瘍外科 教授 石原聡一郎 先生
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レコード番号 59
登録日時 2019/8/23 11:30 登録者 JIMRO
更新日時 2019/8/23 11:31
更新者 JIMRO

質問 潰瘍性大腸炎ではどのような手術を行うのですか?
答え 潰瘍性大腸炎では大腸をすべて切除する手術が標準的な手術です。これを大腸全摘術(だいちょうぜんてきじゅつ)と呼びます。この手術では、大腸をすべて切除して、小腸で作った袋状のパウチ(回腸嚢:かいちょうのう)を肛門につなぎます。ただし、その時の患者さんの状態によって手術を1回で行う場合と何回かに分けて行う場合があります。
何回かに分けて行う場合ですが、これには2回に分けて行う方法と、3回に分けて行う方法があります。3回に分けて行う場合は、図に示すような手術が行われます。最初の手術は、結腸の大半を切除して人工肛門を造る手術を行います。この手術は、結腸亜全摘術(けっちょうあぜんてきじゅつ)・S状結腸粘液瘻(えすじょうけっちょうねんえきろう)・回腸人工肛門造設術(かいちょうじんこうこうもんぞうせつじゅつ)と呼ばれています。ステロイドが大量に投与されているにもかかわらず大量出血が認められる場合や、腸穿孔が認められる場合など、緊急手術が必要な場合は多くの場合この手術が行われます。この手術では、人工肛門を造るため、手術後は通常の食事を摂ることが可能となります。特に食べていけないものはありません。直腸とS状結腸の一部が残りますが、もしこの部分に炎症が認められる場合などは、坐薬など局所的な治療を行えば対処できます。つまり全身的なステロイドの投与は必要ありません。手術前にステロイドが投与されていた場合には、徐々に投与量を減らしていきます。ステロイド剤の全身投与が必要なくなり、全身状態の改善が見られたら、次に2回目の手術をおこないます。2回目の手術までの期間の目安としては、ステロイドが完全に切れた段階から、3ヶ月くらいをあけることが多いので、1回目と2回目の手術の間は、大体半年くらいかかることになります。
2回目の手術では、残っている直腸・S状結腸を切除して、小腸でパウチ(回腸嚢) を造り肛門と吻合を行います。この場合、吻合部を安静に保つために一時的な人工肛門を造る場合と、造らない場合があります。人工肛門を造った場合は、その後、人工肛門を閉じる手術が必要となります。つまりその場合には、合計で3回の手術が必要となります。
大腸全摘術はこのように合計2回、あるいは3回に分けて行うこともありますが、1回で行われる場合もあります。2回あるいは3回に分けて手術を行うか、1回で行うかは、患者さんの全身状態、手術になる理由など総合的に考えて判断されます。一般的に、ステロイドが多量に投与されているような場合は、縫合不全(ほうごうふぜん:小腸のパウチと肛門がうまくつながらないこと) の危険性が高くなるので、1回で手術を終えることは難しくなります。
また、大腸全摘術でパウチ(回腸嚢) と肛門との吻合法には2通りの方法があります。これらは、回腸嚢肛門吻合術(かいちょうのうこうもんふんごうじゅつ:IAA)および回腸嚢肛門管吻合術(かいちょうのうこうもんかんふんごうじゅつ:IACA)と呼ばれています。IAAでは肛門の中の直腸の粘膜を完全に切除してから、パウチと肛門を吻合します。一方IACAでは、肛門内の直腸粘膜を約2cmほど残して吻合を行います。
両方の手術方法がおこなわれていますが、それぞれの方法で、メリットとデメリットがあります。実際の手術の方法について言うと、IACAのほうが簡略にできる手術法です。しかし、少ないながら肛門の中の直腸粘膜が残るため、手術後にこの残った粘膜に炎症が再燃したり、がんが発生したりする可能性があります。がんが発生した場合は再手術が必要となります。また、炎症が再燃した場合は、坐薬などの局所治療を行う必要があります。術後に便の漏れ(漏便:ろうべん) が認められる場合がありますが、IAAのほうがIACAよりも漏便の頻度が高いと報告されています。
また、最近は腹腔鏡補助下手術(ふくくうきょうほじょかしゅじゅつ) も行われています。これは腹腔鏡という内視鏡を用いて手術を行うものですが、従来の手術と比べておなかの傷が小さくて済むという利点があります。手術時間は通常の開腹手術と比べると長くかかりますが、傷が小さいため術後の痛みが軽く、早く日常生活に戻れる利点があるとされています。ただし、腹腔鏡補助下手術は、現在どの施設でも行われているわけではありません。また、腸に穿孔を生じたような緊急手術では、腹腔鏡補助下手術でなく開腹手術しか行えません。
カテゴリ 潰瘍性大腸炎の術式について
参考図 1-2-3.JPG (image/jpeg)
参考図2 IAA_IACA.JPG (image/jpeg)

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