外科治療に関するQ&A メモを隠す
回答者:東京大学大学院医学系研究科・医学部 臓器病態外科学講座 腫瘍外科 教授 石原聡一郎 先生
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レコード番号 58
登録日時 2019/8/23 11:30 登録者 JIMRO
更新日時 2019/8/23 11:30
更新者 JIMRO

質問 潰瘍性大腸炎の場合の手術をするメリットとデメリットを教えてください。
答え 手術をするメリットは、手術をすることになった理由によっても異なります。
絶対的適応、つまり大出血や腸穿孔で手術をする場合は手術を受けないと生命が危険となります。大腸がんを合併した場合も、放置しておくとがんが進行して治すことができなくなります。つまり、絶対的適応で手術をする場合は、これらのことを回避することが目的であるのと同時に、一番のメリットとなります。
一方、相対的適応で手術をする場合は若干異なり、内科的治療に抵抗したり、ステロイドなどの副作用で、患者さんのQOL(生活の質)が損なわれている場合に手術を受けることになります。つまり、QOLが向上したり、ステロイドの合併症を回避したりそれ以上の進行を止めることがメリットとなります。入退院を繰り返しているような場合は、入院を回避して社会生活に影響を及ぼさずに済むこともメリットのひとつです。また、食事に関しては特に制限がなくなるので、何でも好きなものを食べられるようになるのも手術によるメリットです。その他には、大腸がなくなるので大腸がんの危険性がなくなるのも、大きなメリットです。
デメリットとしては、手術が行われる時期には多くの患者さんでステロイドが使用されており、ステロイドが傷の治りを障害したり、感染に対する抵抗力を抑えるため、安全のために手術を2〜3回に分けて行う場合が多いことによって、入院を含む治療期間が最終的に数ヶ月間必要となることがあげられます。この期間のすべてを必ずしも入院している必要は無く、2回目あるいは3回目の手術まで退院して生活をすることができますが、人工肛門で生活する必要があります。また、手術後は便回数が多くなります。手術直後は頻回でも、期間を経るにしたがって徐々に排便回数は減少し、1年くらい経つと1日5〜6回位に減ります。その他、排便にかかわる問題としては、便とガスの区別がし難くなったり、夜間に少量の便の漏れがある場合もあります。
また、小腸で造ったパウチ(袋)に炎症が起こり(これを回腸嚢炎:かいちょうのうえん、と呼んでいます)、腹痛や発熱などが認められる可能性もあります。これによる症状があまりにひどい場合には、大腸全摘出してせっかく回腸嚢と肛門の吻合を行ったのに、その回腸嚢を切除して、最終的にまた人工肛門に戻さなければならなくなる患者さんも、非常に頻度は少ないながらも報告されています。また、癒着による腸閉塞が起こることもあります。
なお、大腸全摘術を行った際の手術死亡率は、手術の前の患者さんの状態により異なりますが、これまでの報告では約1〜2%あるいはそれ以下で、死亡例のほとんどは重症で、内科的治療を続けていればもっと死亡率が高くなった例です。
以上が、手術に関連して起こる可能性のある「デメリット」です。
カテゴリ 潰瘍性大腸炎の外科治療について
参考図
参考図2

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